シリア北東部でも原油汚染がある事が判明

土壌汚染

【AFP=時事】シリア北東部の村で、アブドルカリム・マタル(Abdulkarim Matar)さん(48)は家畜の馬の死を見守った。近くの石油施設からの原油流出で、資源豊かな村の川が汚染されたのだ。

 マタルさんによると、冬に発生した複数の洪水で近くの貯蔵施設から廃油が漏れ出し、マタルさんの所有地を汚染。所有地内を流れる川も油で汚染され、その水を飲んだアラビア馬2頭が死んだという。

 シリアでは内戦が始まった2011年以来、石油汚染の懸念が高まっている。内戦が石油インフラに打撃を与え、主要な油田の管理をめぐりライバル勢力間で競争が起きている。

 オランダのNGO「パクス(PAX)」によると、特に懸念されているのが同国北東部ハサカ(Hasakeh)県ルメイラン(Rmeilan)の大規模な貯蔵施設だという。北東部はクルド人が支配している地域だ。

 ルメイランの油田近くには米空軍が駐留。この油田は内戦初期にシリア政権軍が撤退して以来、クルド人にとって貴重な資産の一つとなっている。クルド人自治区当局は米軍の助けを借り、需要のある油田を数か所管理している。主な収入源を油田に頼っているのだ。

 パクスと石油情報サイト「TankerTrackers.com」の共同創設者サミル・マダニ(Samir Madani)氏によると、過去5年間に大量の原油が同地域の川に漏れ出し、数十の村々の住人の健康と生活を脅かしているという。

 マタルさんは、自分の土地を流れる汚染された川が「われわれの地下水を汚染し、絶えず臭いを発している」と語り、「皮膚感染症などの病気の温床でもある」と懸念を示している。【翻訳編集】 AFPBB News

https://news.yahoo.co.jp/articles/d17ba2743824c943d3b7acc5bef2ee0891ec4cd5

この話題についてのツイートは少ないですが、「原油汚染」という意味ではモーリシャス沖でのタンカー座礁事故のツイートは非常に多く見つかります。

原油が自然界に流出してしまう事故は度々発生しています。汚染されてしまった土壌の回復には30年かかるとも言われますが、一方で微生物で分解されて数年で綺麗になるとも言われます。一体どちらが本当なのでしょうか?

関連する記事を調べてみました。

バイオレメディエーションは、微生物の有害物質分解能力を活用して浄化する工法です。
油を分解する微生物は、通常どの土壌にも存在しています。しかしながら、汚染現場の土壌では、油分分解微生物の活性化に必要な酸素や栄養塩等が不足したり、冬期に土中温度が低下したりするため、浄化の進行が遅く、分解が促進されません。
そこで鹿島では、微生物による油の分解能力を最大限発揮させるために、地中の環境条件を最適化し、効果的な油汚染土壌の浄化を実現しました。浄化工法として、対象地盤の微生物を利用するバイオスティミュレーション(「切り返し法」と「強制通気法」)や、バクリンHCプレミアム(4種複合菌を含む微生物製剤)を土壌に散布・混合して、分解、浄化するバイオオーグメンテーションがあります。

https://www.kajima.co.jp/tech/soil_pollution/soil_tech/oil/index.php

バイオレメディエーションは土壌だけでなく、海洋の浄化など水質改善にも利用されています。
タンカーの座礁などによる石油流出事故をニュースで耳にされたことがあると思いますが、アメリカで起こった「エクソンバルディーズ号の原油流出事故」では、世界で初めて大規模なバイオレメディエーションが実施され、その技術が脚光を浴びました。

【エクソンバルディーズ号原油流出事故】
1989年に起こったアメリカで最大の石油流出事故で、それまで海上で発生した人為的な環境汚染では最大級と言われています。

原油タンカー「エクソンバルディーズ号」が座礁によりアラスカ州に約258000バレルの原油を流出させ、数十万羽もの海鳥ほかラッコなど海生ほ乳類、数百羽のハゲワシなど数多くの動物が死亡し、1931キロ以上の海岸線にも甚大な被害をもたらしました。
この時、アメリカ環境保護局とエクソン社が世界で始めて微生物を用いた大規模なバイオレメディエーションを実施し、詳細な科学的データがとられました。

この時、微生物による原油の除去が行われました。

原油の成分の中には、普通の微生物では分解できないものも多くあるのですが、原油の中で成育でき、さらに原油を分解できる微生物が、ほとんどの海岸に一般的に生育していることが明らかとなっていたため、この石油流出事故では海岸に微生物の栄養分となる成分が550トン散布され、微生物を増殖させて、原油の除去と海洋の浄化が行われました。

https://biofuturejapan.com/column/01-2-72

原油流出の長・短期的影響については包括的な調査が行われた。もっとも信頼できる推計によれば、事故後まもなく死亡した野生動物の個体数は次のとおりである。

各種の海鳥:25万-50万羽、ラッコ:2800-5000頭、カワウソ:約12頭、ゴマフアザラシ:300頭、ハゲワシ:250羽、シャチ:22頭、その他サケやニシンの卵の被害は甚大であった。徹底的な原油除去作業によって一年後には現地を訪れる人間の目に触れるような被害の痕跡はほとんど見られなかった。だが今日でもその影響を探知することはできる。長期的影響としては、さまざまな海洋動物の個体数減少がある。例えばカラフトマスの個体数は減少したままである。しかしエクソンモービルは2001年のニュースリリースで『プリンス・ウィリアム湾の環境は健全であり、(生物社会も)繁栄している。現地を訪れたものの目には、これがはっきりしてり、……。』と述べている。ラッコとカモは事故後何年間も死亡率が上昇したが、これは原油汚染した生物を餌にしたためであろう。動物の多くが汚染された土壌中に埋もれた餌を掘り出す0さい原油にさらされていた。

調査者の報告によれば、海岸線に生息するムラサキイガイなどは汚染の影響から回復するために30年を要するかもしれない。原油流出から15年後にノースカロライナ大学の科学者が明らかにした所見は、バルディーズ号から流出した原油による打撃は予想以上に長期間にわたるというものであった。

エクソンモービルは2003年のプレスリリースで、『アラスカやその他各地で得られた科学的知見によれば、原油流出は短期的には深刻な影響を与えるが、環境には驚くべき回復力がある』という正反対のコメントを残している。しかし、短期的にも長期的にも深刻な影響があるとみる環境活動家は多い。

Wikipediaより

これらの記事からわかったことをまとめてみます。

  • 原油を分解する微生物は土壌にも海洋存在する
  • 原油を分解できるかは酸素や栄養塩等が必要
  • 海洋汚染の場合には見た目では1年後には被害の痕跡は殆ど見つからない
  • 海岸線に生息する生物が完全に影響を受けない状況になるまでは30年かかる

つまり、技術的には原油を分解できる可能性は十分にありますが、分解するまでに野生生物などに摂り込まれてしまうと被害は大きく・長くなってしまうようです。

モーリシャス沖での原油流出事故についても同様ですが、流出域を狭めて早く処理する事が大切みたいですね。

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